吉川(きっかわ)知宏 弁護士 による自転車製造関係者に対する「消費者の意識動向とクレーム対応」についてのご講演(平成19年2月16日)のあらましを、自転車技士(組立整備士)の方々の参考のために、ご好意で転載させていただいたものです。したがいまして、内容に関するご質問等のお問い合わせはご遠慮願います。
「消費者の意識動向とクレーム対応」
弁護士 吉川 知宏           
第1 消費者の意識動向
 1 意識動向及び行動傾向
権利意識の強化・許容性の縮小・情報の広範な流通・マスコミの大企業に対する厳しい態度
証拠化及びその容易な公開
 電話は録音されている、EMailは転送可能→インターネット上で公開される可能性がある

 2 対策
初期対応の大切さ
 冷静な対応、重要性の見極め、間違った回答をしない
会社としての適正かつ統一的な対応
 同一事例には同一の対応、責任部署・責任者
前例を生かす仕組み
 クレーム対応の蓄積

第2 具体例
 消費者から「うちの子がお宅の自転車に乗っていたら、タイヤがパンクして転んでケガをした。どうしてくれるんだ!!」という電話がかかってきた場合
 1 事実関係の冷静な把握
消費者→住所・氏名・電話番号
「うちの子」→名前・年齢・性別
「お宅の自転車」→車種・購入時期・購入場所
「タイヤがパンク」→破損状況・修理歴
「ケガ」→ケガの具体的内容及び程度・通院の有無及び通院先
 2 事実関係の社内分析
クレーム処理規程はあるか?→社内規程として整備すべき
責任部署・責任者は決まっているか?→クレーム内容に対応する責任部署・責任者
重要事案とそうでない事案の見極めが大切→重要事案を見逃すことの怖さ

 3 消費者への対応
責任部署・責任者による対応
電話?書面?訪問?
必要以上の回答をしない
謝罪すべき場合は素直に謝罪する
道義的責任は認めても法的責任は留保すべきケース
根拠を示す (取扱説明書・保証書・法令)

 4 事態が悪化した場合
法務担当者との連携→法的責任の有無及び程度についての厳密な検討

第3 メーカーの法的責任
 1 製造者としての責任
   民法
 契約上の責任・不法行為責任

   製造物責任法(PL法。平成7年7月1日施行)   
 製造業者等が引き渡した製造物に欠陥が存在した場合の責任(法2条)
 但し、製造物の特性の認知、合理的に予見できない誤使用、警告や指示が明確かつ適切になされているのに不正な使用、製造物の効用・有用性(許された危険)、費用対効果(経済性)、技術水準、通常の使用期間・耐用期間など。

 2 消費者契約法(平成13年4月1日施行)
 隠れた瑕疵により消費者に生じた損害を賠償する事業者の責任の全部を免除する条項は無効(法8条)

第4 その他
 1 適切な処理による信頼の獲得
 2 消費者ニーズを把握する一つの契機
以 上